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錦鯉の養殖方法(現場レポート)
新潟県妙高市で個人で鯉の養殖をしている生産者を訪問し、
錦鯉の「養殖方法」について取材してきました。
(2018年6月24日、7月24日に訪問)
(錦鯉の「魅力や歴史」についての記事はこちら錦鯉の「歴史と魅力」について)
皆さんは錦鯉にどういったイメージをお持ちでしょうか?
錦鯉はリッチな豪邸の庭で、優雅にのんびり泳いでる印象があるのではないでしょうか?
確かにこの地位までたどり着いた錦鯉はたくさんの愛情を受け、優雅な生活を送ることができます。
しかし、錦鯉がこの地位を得るためには、壮絶な試練を幾度も乗り越えなければなりません。
それは人間の世界の「受験」や「就職活動」とは比較できない程厳しい「選別の試練」を受けなければならないのです。
では、実際に鯉たちの「過酷な試練」はどのように行われているのか?
今回は実際に鯉を産卵させ、育成する方法について取材してきた内容をご紹介していきます。
錦鯉の養殖方法
錦鯉の養殖は下記の流れで行われます。
①親鯉の飼育
②産卵
③放流(野池)
④育成と選別
⑤販売、または冬期育成(室内水槽)
①親鯉の飼育
錦鯉の養殖を始めるには、まず「親となる鯉」を飼育していなければなりません。
親の鯉は通常、屋外の鑑賞用の池で飼育されています。
親の鯉たちはきちんとした循環式の濾過槽もついており、透き通ったキレイな水で育成されています。
また、体調管理のため育成水にはわずかに塩分も加えています。
↑写真:親の鯉の育成池
~ろ過方法~
錦鯉の水槽のろ過装置は下記の3ステップで濾過されていました。
物理ろ過→生物ろ過→pH調整
「物理ろ過」はフィルター等で水中の大きな糞やごみを取り除きます。
「生物ろ過」はろ材を使用し、水中に溶け込んだ糞由来のアンモニアを除去します。
「pH調整」は牡蠣の殻を利用し、水質をアルカリ性にしていました。
②産卵
産卵時期
錦鯉の産卵期は4月下旬~7月上旬です。
日中の気温が20℃前後で安定する5月末から6月上旬の産卵が一番成功率が高いのとことです。
産卵方法
水量1トンの水槽に人工の産卵用の海藻を取り付けます。
↑写真:人工の産卵用の海藻。
この水槽に親の鯉をメス1尾とオス2尾を飼育水槽から移動します。
すると翌日の午前4時~5時に産卵と受精が終わります。
産卵後はすぐに親鯉を取り出します。
(一緒に入れとくと卵を食べてしまいます。。)
この時の卵はメスのサイズにもよりますが30万~100万個は獲れるそうです。
その後、水温(℃)×日数(日)=100℃を超えると卵が孵化します。
今回は水温が20℃であったため5日で孵化しました。
~不思議ポイント~
飼育水槽も水温は変わらずたくさんの鯉がいますが、そこでは交尾をしません。
そのため、交尾の発動条件は「人工の海藻」にあると考えられます。
③放流
孵化した鯉は「野池」に放流しますが、放流前にはきちんと準備をしておく必要があります。
(今回の放流日は2018年5月27日)
池の準備
今回の「野池」は田んぼを70cm程度掘り下げて使用しています。
その池に水を溜め、エアレーションで酸素供給を行います。
(池の水は泥水で中はよく見えません。)
また、サギやカワウ等の天敵から鯉を守るためにサイドネットを張り、上部には糸を張ります。
「野池」の水質管理はホース1本分くらいの水量で常に「給水」と「排水」を行うことで保たれています。
(コイの養殖をする場合は、通年で水が確保できる田んぼが必要条件となります。)
↑写真:稚鯉を養殖する野池
餌の準備
放流直後の稚鯉は「ミジンコ」を食べて成長します。
そのため、放流前には、野池に「ミジンコ」がたくさん生息している状態にしておかなければなりません。
ミジンコは野池に発酵鶏糞を撒くと自然に発生します。
しかし、増えるまでには2週間程度必要です。
今回は5月の中旬にこの準備を開始し、ミジンコの成長を確認したうえで放流を行っています。
④育成と選別
育成(野池)
放流された鯉は野池ですくすくと育ちます。
放流から10日~15日間はミジンコを食べて成長します。
その後は専用の餌を朝と夕方の1日2回に分けて給餌して育成します。
選別
放流されてすくすく育った鯉は、選別にかけられます。
(ここがコイ達の命運を分ける最大の試練です!)
今回の放流では4万~5万の稚鯉を野池に放流しています。
そして、放流から40日~50日後に厳しい選別作業を行います。
選別は「色や模様、骨格等」を見て、将来有望な錦鯉になる者のみを残していきます。
1回目の選別は7月14日に実施しました。ここで4万尾の鯉を約3500尾まで選別します。
その後、2週間ごとに2回目→3回目→4回目まで選別をして300尾まで絞り込みます。
この厳しい選別を乗り越えた者のみが、立派な錦鯉になれるのです!!
↑動画(1回目の選別の様子)
⑤販売、または冬期育成(室内水槽)
10月なると野池で育成、選別された鯉は20cm程度まで成長します。
この時点で優秀な鯉は販売されるか、冬用の水槽にお引越しをして育成します。
そして、冬を乗り越えた鯉は春先の需要期に再度販売されます。
~冬季に室内育成をする理由~
コイは5月~10月までは野外の野池で飼育できますが、冬は野池では生きられません。
そのため、水温15℃~20℃に保たれた室内の水槽で飼育管理をしなければなりません。
この室内管理は「ヒーター」や「ポンプによる水の循環」で電気代を使うため高いランニングコストがかかります。
まとめ
今回の鯉は3回目の選別まで終わりました。
4回目の選別と冬期水槽への移動作業の追加レポートした続編はこちら錦鯉の養殖方法~収穫と選別~
錦鯉の養殖場を実際に「見て」、「聞いて」、「体験」することにより、
「生き物を育てるビジネス」の可能性と面白さを改めて感じています。
今回の取材は錦鯉の養殖ですが、同じ池でドジョウもたくさん育っていました。
(ドジョウは育てるつもりなく、勝手に増えています!!)
現在、ドジョウはどこにでもいる魚ではなく貴重な魚になっています。
昔から「ドジョウ1匹、ウナギ1匹」と言われるほど小さくても栄養価の非常に高い魚なのです。
どじょうを本気で養殖したら、ウナギの代用になる水産物としてブームを起こせるのではないか!?
まだまだ、農業・養殖ビジネスに秘められた可能性を感じてワクワクしています。