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お米はどのような環境で生産されているのか?
今回は新潟県妙高市で「不耕起栽培」によるコメ作りを実践している生産者の田んぼへ現場取材に行ってきました。(2018年9月14日)
都会に住んでいると、お米が実際に「どのような環境」で、「どのような方法」で育てられているのか知らずに食べている方が多いのではないでしょうか?
(恥ずかしながら、ここの田んぼに来るまで私自身がそうでした。)
今、新潟の田んぼは収穫期に入っており、お米の収穫真っ盛りです!!
いたるところで収穫作業が行われています。
その中でも今回お伺いさせていただいた農家さんは「不耕起栽培」という方法で稲を栽培しています。
日本でこの方法を実践して、稲を育てている農家はほとんどいません。
そのため、「不耕起栽培」のお米は市場にでてくることがほとんどない貴重なお米です。
↑写真:稲のアップの写真(不耕起栽培で育った稲)
「不耕起栽培」とは簡単に言ってしまうと「耕さず、化学肥料を使わず、農薬も使わない」栽培方法です。
この方法で育成された稲は「化学肥料と農薬不使用」のため、「安心・安全」なお米が収穫できます。
さらに、実際の「不耕起栽培の田んぼ」を観察すると、ものすごくたくさんの生き物がいることに驚かされます。
メダカ、ヤゴ、イトミミズ、タニシ、カエル、ミジンコといった普段見ることのない様々な生き物が共存し、食物連鎖によって繋がった「小さな生態系」を作っているのが分かります。
(様々な水中の生き物達は独特の動きや捕食行動を行っており、観察しているだけで何時間でも楽しめます☆)
今回はそんな素敵な田んぼをレポートしてきました。
↑イトミミズの動画(2018年6月24日 撮影)
一方、不耕起でない他の田んぼを観察すると、驚くほど「生き物」がいません。
見た目は自然豊かな田園風景で、稲はすくすくと育っているように見えます。
しかし、田んぼの水の中には何もいません。
生き物が育たない田んぼで普通のお米は作られているのです。
今、日本の食卓で食べられてるお米は、みんなこちらの環境で育ったコメになってしまっているのです。
不耕起栽培の現場インタビュー
「不耕起栽培の理想形」や、「詳しい栽培方法」、「歴史」等については後日、別の記事にて掲載いたします。
今回は現場の取材でリポートした、農家さんの生の声を書いていきます。
不耕起栽培のコメ作りを始めた理由。
なんで不耕起栽培をはじめたですか?
家族が健康を崩し、本当に安心安全に食べれるものに興味を持つようになりました。
その時に、主食であるお米を無農薬で安心安全に栽培できる不耕起栽培に出会い、
約4年前から本格的に栽培を始めたそうです。
不耕起栽培の良さ(メリット)
不耕起栽培の良さはどういったところでしょうか?
不耕起栽培は「耕さず、化学肥料を与えず、農薬を使用しない」のが特徴の農法です。
そのため、耕すための耕運機、化学肥料、農薬は使用しません。
化学肥料と農薬を使用しないため「本当に安心・安全」なお米を作ることができます。
不耕起栽培の難しさ。
不耕起栽培のどういったところが難しいですか?
不耕起栽培は「耕さない、農薬を使わない」でも収穫量を落とさずに生産できるといった、「理想形」があります。しかし、実際にこの方法で栽培すると「理想形」の通りにはにいかないことも多いとのことです。
例えば、雑草は稲作においては大きな問題です。(普通は除草剤を撒き対処します。)
「不耕起栽培」は土の中でイトミミズを飼い、そのフンが土の上を覆うことで雑草が生えなくなるのが理想形です。
しかし、実際はなかなかこれがうまくいかず、除草剤を使用しないため雑草との戦いが続いているそうです。
また、不耕起栽培は大きくなった稲を間隔を広く、深く植えるため、最新型の普通の田植え機が使えなかったりといった効率化の面でいろいろと問題がでてくる難しさもあります。
今年の稲とおコメのでき具合。
今年のお米のできはどうですか?
10月の頭に収穫を予定しており、最終的な結果は収穫してみないとわからないとのことですが、試行錯誤を繰り返し、今年もうまく育ってきているとのことです。
今はスズメがお米を食べに来るのに苦戦しているとのことです。
そのため、スズメの対策をいろいろと実践しています。
(近くの田んぼには行かず、不耕起の田んぼはスズメがたくさん集まってきてしまうそうです。
スズメにとっても無農薬のおコメは魅力的なのでしょうか?)
↑写真:かかしの写真
(スズメが覚えてしまうため、1週間ごとに小出しに対策変更。)
今後の不耕起栽培の田んぼを広げていく際の問題点
今後、不耕起栽培の田んぼを増やしていく際の課題は何でしょうか?
不耕起栽培は安心安全なおコメが作れる理想的な農法です。
しかし、実際にこの農法を広めるのは多くの課題があります。
その一つが「冬季湛水」の問題です。
不耕起栽培は水田の水中の生物たちの働きによっておいしいおコメを作る仕組みです。
そのため、水田の水は1年中ためておかなければなりません。
これは今の田んぼでは非常に難しいとのことです。
普通の田んぼだと冬場は水が止められてしまうのです。
(水の権利もいろいろとあるそうです。)
また、稲の収穫の際に地面が乾いて固くないといけないため、水はけのいい田んぼばかりになってしまっています。
さらに、もしこの農法が広がってしまったら既存の農薬メーカーや耕運機メーカーは儲からなくなります。そのため、安心安全なお米ができるようになっても農協やメーカーはやりたがりません。
他にも雑草の処理や、普通の機会が使えない場面が出てくる等の「効率面」での課題も多いとのことです。
↑写真:不耕起栽培の田んぼの写真
まとめ(今後の展開)
不耕起栽培を使って、「安心安全」で自然にやさしい循環型の田んぼを作るのは素晴らしいです。
この農法が広がれば安心安全なお米を日本人が食べれるようになるだけではなく、輸出して外貨を稼げるようになる可能性を秘めています。
さらに、高い付加価値のついたおコメは日本で唯一「生産額ベース」と「カロリーベース」の両方の食料自給率を上げられる作物です。
(食糧自給率の詳細はこちら 食料自給率とは?)
こうした取り組みを広げ、このような生産者を応援する人達を増やすためにはどうすればよいのでしょうか?
それは、「農業」や「食べ物」に関心を持ち、実際に農家さんを訪ねる機会を増やすことが重要だと思います。
今回、実際に農家さんを訪問すると単に「おいしさ」や「安心安全」「自然にやさしい」と言った言葉で表現できるおコメの良さだけでなく、「感情」が動かされます。不耕起という「栽培方法」やここで「育てられたおコメの背景」、そして「農家さん」のファンになりました。
今は訪問まではできない場合でもYou tubeやブログなどで情報を発信し、取り組みを知ってもらうこともでファンを増やすこともできます。
不耕起栽培のような高付加価値で、高単価の製品を販売していくビジネスモデルの農業では、この「ファン」を作るのがとても重要になります。
「ファン」は価格だけでなく、生産背景や農家自身のストーリーまでを見て製品の価値を判断してくれます。
これからの日本の農業・養殖は新しい付加価値を高めなければ、国際的な競争力はでてきません。
今後は農作物を「もの」としてだけでなく、日本人の実直な「生産ストーリー」や「環境配慮の取り組み」、「本当に安心・安全な食材の提供」といったことまでを価値にして勝負してことが、競争力を高めるチャンスになると考えています。
今回取材した不耕起栽培にはまだまだ課題が多いのは事実です。
しかし、この農法をベースにし、農薬や遺伝子組み換えといった「環境や人に良くない化学」ではなく、「自然を最大限に活かせる科学技術」や「IOTの技術」によって課題は解決できると思います。そうすることで、不耕起栽培は「自然に優しい循環型の究極の農法」に発展していく可能性を秘めていると考えています。