目次
「冬眠(とうみん)」とは何か?
「通常の冬眠」と「人工冬眠」の違いとは?
「通常の冬眠」について
「通常の冬眠」は、動物が寒冷な季節や資源の不足などに備えて、代謝率を下げて休眠状態に入る生理現象です。基本的な原理は、体温や代謝を低下させ、エネルギーの節約と生存確率向上を図ることです。
冬眠するかしないかは「生き物の種類」で決まります。
通常の冬眠を行う動物には哺乳類であるクマやシマリスなどがあります。また、変温動物も冬になると体温が低下して冬眠する種類もいます。これらの生物は寒冷な環境で冬季を乗り越えるために、体温と代謝を低下させ、エネルギーの無駄を抑えて生存しています。
「人工冬眠(じんこうとうみん)」について
「人工冬眠(じんこうとうみん)」とは、人間が意図的に体温や代謝を低下させ、休眠状態に入る技術を指します。人工冬眠は「コールドスリープ」とも呼ばれています。
人工冬眠では、医学的なアプローチを用いて人間の体温や代謝を意図的に低下させます。ですが、まだ実用化はされておりません。
人間が「冬眠」できない理由
なぜ、人間はクマのように「冬眠」することができないのか?
人間がクマのように冬眠できない理由は、生体の制約や代謝プロセスの複雑さが関与しています。人間の代謝システムは細かな調整が求められ、完全な冬眠状態に入ることは難しいとされています。もし冬眠状態に入ったとしても元の状態に戻れなくなるリスクもあります。
新技術による「人工冬眠」の可能性とは?
科学者たちは、人工冬眠を実現するために様々な手段を模索しています。脳の活動を一時停止させる方法や、代謝を適切に制御する技術の開発が進んでいますが、まだ多くの課題が残されています。
2020年には「本来は冬眠しないマウスを冬眠状態に導くことに成功」しています。
マウスの動物実験では脳内の神経細胞を光で刺激するとマウスは35℃以上あった体温が25℃まで低下して安定し、心拍数と代謝率も約4分の1なっています。光の刺激を停止すると自然に目覚めて異常がないことも確認されています。
しかし、まだ人間での実用化はできていません。
「人工冬眠」技術のメリットについて
もし、新技術によって「人工冬眠」が可能になった場合多くのメリットがあります。下記は「人工冬眠のメリット3選」です。
メリット①:手術や治療への応用
人工冬眠を利用することで、「救命救急医療に劇的な革新をもたらす可能性」があります。
人間を強制的に冬眠状態にすることができれば、エネルギー代謝が低下して「炎症」「免疫反応」「ショック症状」などが抑制されます。そうすることで手術時や治療時に患者さんの体への影響を最小限に抑え、治療効果を向上させることができるようになります。
具体的には、心筋梗塞や脳卒中によって倒れた患者さんを救急車で人工冬眠状態にして搬送すれば救命率が大幅に増加する可能性があります!
メリット②:寿命の「延長」の可能性
人工冬眠の技術が進展すればコールドスリープで寿命を伸ばして「不治の病に冒されてしまっても、冬眠から起きる数年後には技術の発展によって救われる」みたいなこともあると考えられます。
メリット③:宇宙探査への適用
長期の宇宙探査ミッションにおいて、冷凍保存された状態で宇宙飛行士を持ち運ぶことができれば、リソースや健康管理の効率化が可能です。
まとめ
人工冬眠は、生命科学や医学、宇宙探査などさまざまな分野で注目されている新たな技術です。その応用により、手術や治療の進化、宇宙探査の発展、そして寿命の延長などが期待されています。
今後の研究と技術の進展によって、人工冬眠が現実になる日も遠くないのではないかと思います。
参考書籍
最先端の研究者に聞く日本一わかりやすい2050の未来技術
著:中村 尚樹