「外国産和牛とは!?」和牛の遺伝子は守れるのか?

和牛の遺伝子流出で「外国産和牛」が増える!?

以前、日本人の男性が中国へ「和牛」の受精卵を不正に持ち出そうとして中国当局の税関で見つかって捕まるという事件が発生しました。
農林水産省はこの男性を「家畜伝染病予防法違反」の疑いで刑事告訴しました。
(この時は未遂に終わっていますが、他に発覚していない事例はたくさんありそうです。)

この事件をきっかけに不正流出を防止するために、農林水産省は
「和牛遺伝資源の流通管理を徹底するための検討」を始めています。
動物検疫についての詳細記事はこちら(動物検疫について

TPPによって、グローバルな貿易が盛んになる中で、

・「日本は固有種(和牛)を守っていけるのか?」
・「どのような対策をしていくのが良いのか?」

といった様々な課題がでてきています。

今回の記事では和牛の遺伝子流出問題ベースに「和牛」についてもわかりやすく解説してきます。

「和牛」の定義ってなに?「国産牛」との違いは?

そもそも今回問題となった「和牛」とは一体どのような定義なのでしょうか?

同じ牛肉でも「和牛」「国産牛」「外国産牛」といった種類があります。
これらは下記のような定義で分けられています。

「和牛」とは?

「和牛」とは農耕用の在来種に明治以降、外来種を交配して改良した日本特有の「牛の品種」のことです。

一般的に和牛というと90%以上が「黒毛和種」という品種で松坂牛や神戸牛といった有名な和牛は黒毛和種です。
残りの10%弱は「褐色和種」「日本短角種」「無角和種」といった品種が占めています。

和牛はお肉に脂肪の交雑が入りやすく、霜降り肉が生産できます。
脂肪の交雑はホルスタイン種やヘレフォード種などの西洋の品種を肥育してもこのような肉を生産することはできません。

また、和牛には加熱した際に甘いコクのある独特な香り「和牛香」がするのも大きな特徴です。
和牛の生産は生後8か月~10か月の子牛を仕入れて肥育し、生後28か月~32か月かけて約650㎏~750㎏まで育てて出荷されます。

「国産牛」、「外国産牛」とは?

「国産牛」とは「日本で飼育された期間が一番長い牛」のことです。
「外国産牛」「海外での飼育期間が一番長い牛」です。

つまり、「国産牛」と「外国産牛」の違いは品種ではなく「飼育した場所」で決まります。
日本の一般的な乳牛はホルスタイン種ですが、日本で育ったホルスタインの肉は「国産牛」です。
スーパーマーケットで「国産牛」として販売されている「乳用の牛」は成長が早く、生後20か月~24か月で700㎏~800㎏になります。
成長は早いですが、和牛と比較すると「脂の霜は少なく」、「肉のきめも粗く」、「変色しやすい」といった特徴があります。

「外国産和牛」とは?

「和牛」とは「牛の品種」のことであり、和牛の遺伝子を持ち出して海外で育てた牛も「和牛」となります。
そのため、外国で育てられた和牛は「外国産和牛」となります。

和牛の輸出は1998年までに研究用として「生体が247頭」と「和牛の精液」が米国に輸出されてからは実施されていません。
しかし、和牛の遺伝子は米国経由でオーストラリアに渡り「オーストラリア産WAGYU」として東南アジア各国に輸出されています。

これからも、「外国産和牛」がドンドン増えていく可能性があります。
そのため、農林水産省は厳しい規制や動物検疫の強化をするなどで「和牛」という固有種を守ろうとしています。
しかし、本当にこれからも「和牛遺伝子」を守れるかは疑問です。

「和牛遺伝子流出問題」に解決策はあるのか?

「和牛遺伝子問題」に対して守りをいくら固めても、海外への流出を完全に防ぐことは難しいです。

それならば、きちんと「和牛」の遺伝子を国の資産として、海外で使う場合にはきちんとライセンス料をとり、国産和牛とは違うことがきちんとわかる形にするといった制度をつくって、「海外で和牛を育てる正規の仕組み」を作るのも重要だと思います。

下手にガチガチに規制を固めて海外で和牛を使えなくするより、きちんとルールを作って使わせた方がコントロールが効いて良い場合もあると考えています。
(海外でどこまできちんとルールが守られるかという問題はありますが。。。)

まとめ

畜産物、農産物、水産物の生産で一番重要になってくるのが「種(遺伝子、種、稚魚)」です。

今、農業ではモンサントのようなグローバル企業が種の権利を独占しています。
そのような巨大企業は自社の種と肥料と農薬をセットにして世界の農業に対して攻めてきています。
詳しくはこちら(種子法について

日本も守るだけではこの流れを止めることはできません。
日本固有の種を活かして攻めに出る時が来ているのではないでしょうか?

~参考書籍・新聞~
・農業共済新聞
・肉の科学 沖谷 明紘 著

 

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