新技術の導入が食の「安心・安全」を脅かす?

「植物工場」や「陸上養殖」が食品の安心・安全を脅かす!?

近年の農業、養殖ともに「植物工場」、「陸上養殖」といったすべてを人工的に制御・管理して農産物の工業製品化が進んできてます。
また、「AI」や「IOT]の技術も日々進化し、組み込まれてきています。
環境にやさしく効率的に作物が作れるため、これらの技術はこれからも伸びていくビジネスです。

しかし、農業・養殖は工業製品ではありません。それなのに、すべてを人が制御できると考え、出てくる問題を「新しい技術」、「新しい薬品」、「目新しい機械」で解決しようとする傾向があります。
すると、本来の「安心・安全でおいしい食品」をつくると言う目的を忘れ、「薬品と機械屋が利益を出す」のが目的に変わる危険性があります。

今回は農業・養殖の最新技術が間違った方向にいかないために、過去の「日本の水道水」を例に紹介していきます。

技術は一度進むと戻れない?
日本の浄水場がお金をかけて、まずい水を作るわけ。

皆さんは、水道水のをそのまま飲むでしょうか?
今は半分以上の人が塩素臭い水道水をそのまま飲まず、浄水器や煮沸による処理をして飲むか、ペットボトルの水を飲んでいます。
また、水道料金も値上がりし続けています。
なぜ、このような事態になってしまったのでしょうか?

技術の進歩が水を悪くした。

日本の戦前の浄水場では英国式の微生物を利用し、ゆっくりと水をきれいにする”緩速ろ過処理”の浄水場が多数建設されました。
この方式では濁りは自然に沈殿させ、殺菌・消毒をしなくても”微生物の力”で細菌を取り除くことができます。

そのため、「塩素での消毒」をしなくても「おいしい水」を作れていました。
しかし、第二次世界大戦後に日本の浄水場は米国式の”急速濾過処理”を好んで採用していきました。
この方法は、原水の濁りを「凝集剤」という薬で沈殿させて、「塩素殺菌」によって細菌を殺す技術です。
当時は「ろ過池の面積が少なく効率的」、「近代的」、「時代の最先端」ということで、次々と採用されていきました。
(どこか、今のAI技術や、植物工場の技術に似た感じがします。。。)
今の日本の水道水が塩素臭いのはこの技術の良い側面しか見ないで”急速濾過”を導入したことが原因となっています。

※”緩速ろ過”と”急速ろ過”についての詳細は下記の記事をご覧ください。
リンク先:水道水はどのように作られているのか?

なぜ、元の技術に戻せないのか?

急速濾過の技術が出てきた当時は、緩速ろ過が”微生物の力”によって水がきれいになっていたとはわかっていませんでした。

そのため、当時は”急速濾過”が普及してしまったのは仕方ないと思います。
ですが、なぜ現在も塩素臭い水しか作れないとわかっている”急速濾過”しか浄水場では採用されないのでしょうか?

それは、水処理関連会社が儲かるからです。おいしい水を作るためではありません。

”緩速ろ過”は自然の力を借りるため、機械設備がほどんどいりません。
それに比べ、”急速ろ過”は莫大な費用が掛かります。つまり、大きなお金が動くのです。
今は”急速ろ過”に、オゾン殺菌といったさらに高度で、高価な処理を加える浄水場も出てきています。(名目としてはおいしい水を作るためですが。。。)

なぜ、昔の”緩速ろ過”という優れた技術があるのに、新しい技術を進めることしか考えられないのでしょうか?

~昔の技術には戻れなくなってしまう理由~

浄水場の職員は公務員であるため、お金が自分の財布といった感覚をあまり持っていない方も多くいます。
すると、「安心・安全のためならもっとお金をかけていい」と考えてしまいます。
そのための高度で高価な技術が導入され、浄水場の管理が素人ではできなくなります。
自分たちでは管理できなくなると、専門業者に管理を任せることになります。
そうなれば、水処理の機械屋が主導となり、新しい技術を熱心に売り込み、言われたままに高価な技術を浄水場は購入するといった流れができあがります。
本来の浄水場の目的である「安くて、おいしくて、安心・安全な水を提供する」ことは忘れさらてしまうのです。

間違っても、お金のかからない”緩速ろ過”の技術に戻ることはありません。

写真:高度水処理の金町浄水場の取水塔

まとめ

AIの技術も植物工場も陸上養殖の技術も、今の課題を解決するために新しい技術をドンドン生み出し、発展させていかなければなりません。

しかし、発展させていく上で、「新しい技術」と言うだけで飛びつくと、浄水場と同じ過ちを犯します。
きちんと技術の本質を知り、新旧の技術を組み合わせて取り入れていくことが重要です。
自然にできることは、「無駄なコスト」や「無駄な薬品」を使わずに自然にやってもらうといった発想も大事です。

農業・養殖の目的は新技術の導入や機械の販売ではなく、「安心・安全でおいしい食品の安定生産」なのです。

参考資料:中本信忠「生でおいしい水道水」

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