【化学の知識】「酸素」の性質について

酸素ガス

「酸素」は人間、植物、魚など生物が生きていくうえで必要不可欠な物質です。

酸素男
しかし、「酸素(純酸素)」は取扱い方法によっては
重大な事故につながる可能性」があります。

この記事では「酸素」のさまざまな性質についてわかりやすく解説していきます。

「酸素」とは?

空気中の「酸素」の割合

私達のまわりには常に空気が存在しています。

この空気の中に21%含まれているのが「酸素」です。
この酸素を吸って私達は生きています。
酸素発生

~空気の成分組成[vol%]~
酸素:20.1%
窒素:78.1%
アルゴン:0.93%
二酸化炭素:0.033%
その他の成分
(ネオン、ヘリウム、クリプトン、水素、キセノンなど)

「酸素」の基本情報

酸素の基本的なプロフィールは下記の通りです。
(高校の化学で勉強するところです!)
化学の勉強

~酸素のプロフィール~

化学式:O2
原子番号:8
原子量:16
分子量:32
沸点:-183.0℃
融点:-218.4℃
臨界温度:-118.6℃
臨界圧力:5.043Mpa

液化酸素の特徴:
淡青色の透明な液体。比重は水より重たい。

酸素ガスの特徴:
無味無臭で比重は空気よりやや重たい。

「酸素」の用途は?(どんなところで使われているのか?)

酸素は空気中にふつーに存在しています。
この空気中の酸素だけを取り出した純酸素(液化酸素や酸素ガス)
は様々な産業で使われています。

特にたくさんの量が消費されているのが「製鉄・鉄鋼業」です。
H鋼
~その他の使用例~
・養殖業
・純酸素曝気活性汚泥法による汚水処理
・金属の切断、溶接
・高炉への酸素富化
・ガラス溶解
・硝酸、硫酸、オゾンなどの製造
・ロケット推進の酸化剤
・パルプの漂白

この他にも酸素吸入などで医療にも使われています。

酸素の「ヤバい性質」について

酸素の「燃焼」と「爆発」について

酸素というと、「燃える」イメージが強いです。
しかし、酸素だけでは燃えることはありません。
モノが燃えるためには3つの条件があります。

~モノが燃える3つの条件~
①可燃性ガス(燃えるモノ)

②支燃性ガス(燃えるのを助けるガス)
③発火源(点火するモノ)

この3つが揃うとモノは「燃焼」します!
酸素は②の支燃性ガスであるため酸素だけでは燃えません。
点火、燃焼
そして、燃焼の上位互換に「爆発」があります!!
爆豪
「爆発」は燃焼反応などで急激な圧力が発生し、
ガスが大きな音と共に膨張する現象です。

さらに「爆発」にはさまざまな種類があります。

~爆発の種類~

・混合ガス爆発
爆発事故で一番多い爆発。
ガス漏れしたところに一気に空気が混ざって爆発!!

・爆ごう
「爆発」のうち火炎の伝播速度が音速を超えて広がるモノ。
破壊力が強くて発生するとマジでやばい。。
(※ヒロアカの爆豪少年は強いわけだ!!)

・分解爆発性ガス爆発
これは酸素のような支燃性ガスがなくても、ガス単体で引き起こす爆発。
分解爆発性ガスにはアセチレン、酸化エチレン、モノゲルマンなどがあります。

酸素の特性をきちんと理解して、
「爆発」は絶対に引き起こさないようにしなければなりません!!

「酸素欠乏」について

酸素のもう一つのヤバい性質が「酸素欠乏」です。

空気中の酸素濃度が18%未満に低下した状態を「酸素欠乏」といいます。
酸素欠乏は低濃度になればなるほど症状は重くなります。

もし、酸素濃度が6%以下の空気を吸えば2秒でアウトです。
「失神」、「呼吸困難」、「痙攣」を引き起こし約6分間で死にいたります。
(※ハンターハンターでモラウにやられたハギャのようになります。。)
ハギャ(レオル)

発生原因:
換気が不十分な部屋や閉鎖空間で発生する可能性があります。
閉鎖環境で酸素ガス以外のガスが多量に流出したり、酸素が消費されると
酸素濃度が急激に低下します。

もし、刺激性の強いガスが漏れていたりするとすぐに感知して対応可能ですが、
無色、無臭の「窒素」などが場合大量に流出していると対応できません。

ヤバい毒ガスを扱っていれば気をつけますが「窒素」や「酸素」は本来は害のない気体で
あるため油断が事故を引き起こす原因にもなっています。
心肺停止

 

液化酸素の「製造方法」について

液化酸素を製造する方法は「空気液化分離法」「PSA法」の2種類があります。
(どちらも原料は空気であるため原価はゼロ!?)
工場

「空気液化分離法」とは?

空気中には酸素が21%含まれています。
「空気液化分離法」はまずこの空気を臨界温度-140.7℃以下に冷却し、液体空気を作成します。
これを成分ガスの沸点の違いによって酸素と窒素を分離して取り出します。
濃縮した酸素は約99.9%で、純度は高いですが冷却コストが多くかかります。

「空気液化法」にはリンンデ法、クロード法、ハイラント法、カピッツァ法など様々な方法があります。

「PSA法」とは?

PSA法は吸着剤(合成ゼオライト)を使用します。
空気中の窒素を加圧下にて吸着剤で除去し、高純度の酸素を効率的に得ることができます。
純度は97〜98%程度のため「空気液化分離法」よりも低いです。
ですが、そこまで高純度の酸素が必要ない場合はこちらの方がコスパがいいです。
(原料は空気でタダですが、コンプレッサーを使用するため電気はたくさん使います。)

まとめ

酸素はとても身近な元素で様々な分野で活用されています。
しかし、知らないと恐ろしい性質もたくさん持っています。

液化酸素などを企業で使用する際はきちんと施設の許可をとり、
特定高圧ガスの有資格者を選任するなどの対応が必要です。

~参考書籍~
高圧ガス保安法令(抄)第8次改訂版
 高圧ガス保安協会

・高圧ガス取扱ガイドブック第2次改訂版
  液体酸素 編 高圧ガス保安協会

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