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「二宮 金次郎(尊徳)」とは?
日本の小中学校には敷地の片隅に薪を背負って読書をする少年の銅像がありました。
この銅像の人物が「二宮金次郎(のちの二宮尊徳)」です。
二宮金次郎は江戸後期の「農政家」であり「思想家」です。
農家に生まれ、苦労しながら没落した家を再興し、その手腕を買われて諸藩ならび数多くの村を復興。徹底した実践主義者です。
金次郎は農村の生産力に応じて分度を定めて勤倹を説き、その結果としての富を譲り合うという社会的行為に導く「報徳思想」を広め、たくさんの人に慕われたと言われています。
この人物は小学校の校歌で「手本は二宮金次郎!!」と呼ばれる程の人物ですが、小学生が手本にするだけではもったいないです。金次郎の教えは今の日本の農業や農協を復活させるための手本にもなることがたくさんあります。
今回はそんな「二宮 金次郎(尊徳)」についてわかりやすく解説していきます。
なぜ、小学校には金次郎像が設置されているのか?
金次郎銅像が全国の小学校に広まるまでの流れは下記のようであったと言われています。
・金次郎亡き後、お弟子さんが金次郎の言葉を記録した「報徳記」をまとめた。
・明治天皇がこれを気に入り、印刷させて県知事などに配布した。
(これにより、二宮金次郎の名と業績が、全国の当時の人々に広まった。)
・明治の大文豪の幸田露伴が執筆した「二宮尊徳翁」の挿絵として「薪を背負って読書をする金次郎」を使用。
(薪を背負って読書するイメージはここで定着。)
・昭和3年の昭和天皇の即位式での記念事業で全国83カ所に金次郎像が寄付される。
(金次郎の像が全国に設置されたことが「像」が広まるきっかけとなる。)
・富山の遺贈業者がチャンスと見て、全国の小中学校に金次郎像を広めブームとなる。
(金次郎像が全国の小中学校に設置された)
このような経緯で金次郎像が広まったと言われています。
最近の小学校で金次郎像がなくなっている理由とは?
今は金次郎の銅像が設置されていない学校が増えてきています。
その理由としては下記のような意見がでてきて時代に合わないと言われているためです。。。。
・「歩きスマホを助長している。」
・「歩いて本を読むのは危険だ!」
・「子供が働く姿を勧めるのは良くない。」
このような理由で金次郎像は時代遅れと言われるようになってきています。
(最近では切り株に座った金次郎像などもあるらしいですが。。。)
でも、金次郎は本当に時代遅れなのでしょうか?
私は今でこそ金次郎の思想が役に立つ時だと考えています!!
二宮金次郎(尊徳)とはどんな人物なのか?
金次郎は天明7年(1787年)に今の神奈川県小田原市の片田舎で生まれました。
貧しい家庭に育ち、5歳の時に川の洪水で田畑が流されてさらに貧乏になってしまします。
さらに、14歳の時に父が亡くなりさらに貧乏になります。。。
その後は母と弟を養うためわらじを作って売ったり、薪を担いで運んだりして一生懸命働きました。
しかし、16歳の時に母も亡くなり暮らしていけなくなります。。。。
行き場のなくなった兄弟3人はバラバラに親戚の家に預けられます。
しかし、親戚の家で金次郎は厳しくこき使われます。
そんな中でも文字の読み書きもできないのは嫌だと、薪を運ぶ仕事中でも必死に勉強していたと言います。(この時の話が銅像になってます。)
その後、金次郎は自分の家を建て直すため、捨てられた畑でわずか1俵のコメを作ることから初めて、必死に元手を集めて廃れた家を建て直して独立しました。
そして、財政の立て直しが迫られている小田原藩の家老がその噂を聞きつけて金次郎に相談をします。そして、金次郎はアドバイザー兼、実務家として取り組み見事に藩の財政を立て直します。
その後も、この実績を買われ様々な藩から難しい依頼を受けて荒廃した農村を復興させるスペシャリストとして活躍していきました。
(↑写真:我が家の二宮金次郎地蔵)
二宮 尊徳の「教え」とは?
尊徳は農政改革の実践から得た教訓を教える「思想家」としての役割もしていました。
尊徳の教えには様々な要素がありますが、重要なのが「報徳思想・報徳仕法」です。
報徳とは「徳を報いる」ことです。では、尊徳の考える「徳」とはなんなのか?
「世の中のあらゆるものがもつ、それぞれ固有の長所や価値」を「徳」と表現しています。
そして、徳を報いるために毎日良く働き、それぞれの価値を活かすことが大切だとしています。
さらに、報徳思想の概念を理解する上で需要な概念がたくさん提唱されています。
特に重要なキーワードは「至誠」、「勤労」、「分度」、「推譲」、「積小為大」があります。
下記で個別に解説していきます。
「至誠」とは?
「至誠」とは「誠実である」ことです。尊徳はこの「至誠」と共に「実行すること」も重要だとしています。
例えば、だらけた農民達を動かして農地を復興させるためにはまず、誠意をもって自分が誰よりも実行力を発揮してバリバリ仕事をこなしていきます。そうすることで、他の農民たちもついてくるという教えです。誠実なだけでも実行が伴っていなければ人はついてきません。
「勤労」とは?
「勤労」は日本人にとって馴染みのある概念ではないでしょうか?
現代ではこの勤労という言葉には「まじめに働く」といったイメージが強いです。
しかし、尊徳は「勤労」というのはマジメに働くだけではダメだと言っています。
「能動的に知恵を絞って合理化・効率化を徹底して行い労働生産性を上げること」が「勤労」だと教えています。
(嫌々仕事に行って、上司に言われた仕事をマジメにやるだけのサラリーマンは勤労とは言わないのです!)
「分度」とは?
「分度」とは、「自分の収入に対して支出をきちんと予算を設定し、その範囲内で生活をすること」です。
贅沢には限りがないため、きちんと予算の範囲を事前に決めることが重要なのです。
そして、きちんと資産を蓄え次の投資に回して生活を安定させることが大切だと教えています。
こうすることで何かあった時にきちんと対応できるようになり生活が安定するとしています。
これは個人の生活だけでなく、会社や国といった大きな視点でみても同じことです。
「推譲」とは?
「推譲」とは誠実に分度を守り、勤労することでやがて大きな余剰が生じてきます。
その時は家族や子孫のため、他人や社会のために譲ることによって「人間らしい幸福な社会が誕生する」と教えています。そのため、この推譲の思想は「報徳思想の神髄」ともいえる概念です。
「積小為大」とは?
これは金次郎の幼少期の厳しい体験から得た教訓です。
「大きなことを成し遂げるためには、小さなことを積み重ねるのが重要」という考え方です。
金次郎少年は自分の家を建て直すために、最初は他人が捨てた土地を耕し、捨てられた苗を植えることでお米づくりを始めています。時には夜中に勉強するために明りが必要であったため、ナタネを育てて油を収穫し、その油の火を明かりにしています。そのような小さなことを一つ一つ積み重ねて成長して大きな成果と出しています。
(私もブログを1記事づつ地道に描き続けて積小為大になるように励んでいきます!)
まとめ
(現代農業に金次郎の教えはどのように活かせるのか?)
今回の記事では二宮金次郎(尊徳)についてまとめてきましたが、金次郎の教えの汎用性は農業だけでなく会社経営や国家運営にまで生かせる教えです。
個人の主張ばかりが強くなっている現代人が忘れかけている重要な思想が多分に含まれています。
特に「報徳思想」はこれからの日本の未来を考える上で日本らしさにつながる大切な考え方であり、これを学ぶためのきっかけとしても二宮金次郎は多くの人がもっと知る必要があると思います。
最後に、私の印象に残った金次郎の言葉で「尊い人の定義」を紹介します。
・「無駄に起き、無駄に眠り、空しく食べ、空しくきて、何もしない人」
↑尊敬に値しない人。
・「勉強して知識を蓄える人」
↑やや尊い人。
・「努力して事業を成した人」
↑もう一段尊い人。
・「志して道を求める人」
↑さらに尊い人。
・「真心があって得を施す人」
↑より一層尊い人。(尊さMAX!)
そんな尊い人物になれるように私自身も精進していきます!
~参考書籍~
・教養として知っておきたい二宮尊徳
日本的成功哲学の本質とは何か?
松沢 成文 著
・二宮尊徳尊徳の経営学
財政再建、組織改革を断行できるリーダーの条件
童門 冬一 著
・二宮尊徳に学ぶ成功哲学
富を生む勤勉の精神
幸田 露伴 現代語訳=加賀 義
・二宮尊徳に学ぶ天命の見つけ方
この10日間のワークショップがあなたを変える
オーハシヨースケ 著
~二宮尊徳おすすめ書籍~
・教養として知っておきた二宮尊徳
内容:二宮金次郎についての思想を理解するには最適の一冊!
金次郎の教えの概念が非常にわかりやすく解説されています。
ビジネスマンが金次郎について知りたいならこの本が最適です。
・二宮尊徳に学ぶ成功哲学
内容:金次郎の幼少期からの話がストーリー形式でわかりやすく書かれている。
小学校5年生以上が対象になっており、さらりと読める一冊。
尊徳の教えの概念や詳しい考え方を学ぶには少し物足りない感じはします。