「養殖業」が「畜産業」ほど発展しない理由

「農業」、「畜産業」、「養殖業」の違いとは

1次産業で食物を生産する際に「育てる場所」と「生き物の種類」が違うと産業の名称が変わります。産業の名称は農業、畜産業、養殖業に分けられます。
「農業」・・・陸上で 「植物」を栽培すると農業です。
「畜産業」・・・陸上で 「動物」を飼育すると畜産業です
「養殖業」・・・海で育てられた生き物は植物、動物に関係なく養殖です。

陸上では「植物」と「動物」を育てる場合はきちんと「農業」と「畜産業」に分けられていますが、養殖は植物も動物も海で育てられたものは一緒にまとめられています。具体的には植物である海苔やワカメを育てるのも養殖であり、マグロのような魚を育てるのも同じく「養殖」なのです。

食料問題の観点から見た各産業

「農業」による植物(穀物や果実)の栽培は人類の食の根幹を担っています。
穀物は炭水化物が多くエネルギー源となり、植物性のタンパク質も提供してくれます。果実はビタミン類を多く含んでおり、体の調子を整える役割を持っています。

しかし、人間は植物性のたんぱく質だけでは生きていくことはできません。
そのため、動物や魚から「動物性のタンパク質」を摂取する必要があります。

この「動物性のタンパク質」を生産するのが「畜産業」と「養殖業」です。
今後も世界での人口増加により、ますます動物性のタンパク質の需要は増えていきます。
そこで、いかに動物性たんぱく質の生産量が増やせるかが今後の課題になってきます。

「畜産業」と「養殖業」の決定的な違い

「畜産業」は家畜であるニワトリ、牛、豚といった動物を飼育して「動物性のタンパク質」を生産します。これらの家畜の肉は動物性タンパク質ですが、家畜が食べるエサは植物性の炭水化物とタンパク質です。
つまり、「植物性の餌」から「動物性のタンパク質」を生産することができるのです。

一方、「養殖(肉食魚やエビ)」はそうはいきません。
魚やエビを育てるためには、「動物性の餌」を大量に使用します。
魚やエビの養殖では「動物性タンパク質」からしか「動物性のタンパク質」を生産できないのです。
例えば、マグロのFCR(増肉係数)は15程度です。つまり、マグロ1kg育てるには15kgのサバやイワシ等の生餌が必要となります。近年では「マグロの完全養殖が可能になった」話題になり、これで資源を守れるような風潮があります。
しかし、これではマグロが増えてもその分餌となる魚の資源が大量に減少するだけです。
海の資源の減少から「獲る漁業から育てる漁業」と言われていますが、この取り組みも今のままでは発展するか疑問です。

「畜産業」と「養殖業」の決定的な違いは植物から動物タンパク質を作れるか、作れないかです。
人間の食料問題の視点から見ると「畜産業」は新たに動物性タンパク質を生み出す有意義な産業ですが、「養殖業」はただ嗜好品を生産しているだけの産業になってしまっています。

現状、「養殖業」が「畜産業」ほど発展してこなかった理由はここにあります。

養殖業の発展について

今の現状

今は「養殖」も「漁業」も海の資源をただ獲り尽す方向に進んでいます。このままでは水産物は食べれなくなります。
クルマエビの父と呼ばれる故 藤永元作さんも著書の中で、この問題については「うんと頑張ろう」と書かれていますが具体的な対策はでてきていません。

参考資料:えびに夢を賭けた男 藤永元作 著

今後の発展への取り組み

養殖業のこの問題を解決する方法は2つあると考えています。
「魚粉代替え飼料の開発」と「植物性たんぱく質を動物たんぱくに変換できる生物の量産」です。

・魚粉代替え飼料の開発
今、養殖する上で動物質たんぱく質の原料となる魚粉の価格が高騰しており、植物原料で代替えできないかの研究が進められています。
例えば、大豆の油粕やトウモロコシ由来のコーングルテンミール、菜種油かす等の様々な原料が使用されています。
これらの開発が進み、養殖で植物タンパク質から動物タンパク質の生産が可能になれば急激に養殖は発展していきます。

参考資料:養殖ビジネス臨時増刊号 よくわかる!養殖飼料と低魚粉 緑書房

・植物性タンパク質を動物性タンパク質に変換できる生物の量産
生態系のピラミッドの上部の生物(マグロやハマチ等)に直接「植物性たんぱく質」を与えて育てるのは難しいのも事実です。
そのため、最初に「植物タンパク」を餌として利用できる生態系のピラミッドの下の生物(イトミミズ、ユスリカ、ゴカイ、ミドリムシ、コオロギ、その他昆虫)を大量に生産できるシステムを作ります。養殖したい魚介類に直接植物性の餌を与えるのでなく、一度小さな生き物達の力を借りるのです。この取り組みは養殖の未来を担う重要な新規ビジネスになる可能性が高いと考えています。

様々な生き物の力を借りた循環系を人の手でサポートすることでうまく回る方法を作る。
それが私、循環屋の目指す今後の取り組みでもあるのです。

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