【水質管理】窒素循環とは?(アンモニア→亜硝酸→硝酸)どのように分解されるのか?

循環式養殖(アクアリウム含む)の「水質管理」シリーズ④
循環式養殖についての記事はこちら(循環式養殖の水質管理

窒素循環とは?

循環式養殖では水槽内で有機物が毒性の高い「アンモニア」となります。
アンモニアは生物ろ過によってアンモニア→亜硝酸→硝酸と分解されて毒性を低下させます。

このように窒素化合物を微生物の力を利用して、「アンモニア」から毒性の低い「硝酸」に
変換して循環させることを「窒素循環」と言います。

「アンモニア」と「亜硝酸」の毒性についてはこちら↓
アンモニアと亜硝酸の毒性について

今回はこの「窒素循環」について詳しく解説していきます。

「アンモニア→亜硝酸→硝酸」
の硝化反応による窒素循環

アンモニアの発生源について

養殖では給餌をすることによって発生する残餌やフン、
または死骸等などの有機物(有機窒素化合物)が分解されて
アンモニア(NH3)」が発生します。

CO(NH2)2 + H2O → CO2 + 2NH3

↑化学式
:生物の排泄物である「尿素CO(NH22」が分解されて「アンモニアNH3」になります。

この反応は水槽内で独立栄養細菌によって活発に行われるため、
アンモニアがどんどん増えていきます。

※NH3(アンモニア)は養殖水中では、ほとんどがNH+(アンモニウムイオン)の状態で存在しています。
アンモニアの平衡条件についての詳細はこちら↓
アンモニアの毒性について

アンモニアから亜硝酸への硝化

アンモニアは好機性環境(酸素が多い水中)でアンモニアを酸化する細菌によって「亜硝酸(NO2」が生成されます。
ここで活躍する「アンモニア酸化細菌」はニトロソモナス属やニトロソスピラ属などに属する細菌が知られています。これらの細菌は「独立栄養細菌」が生成したアンモニアを使用して生きている細菌のため「従属栄養細菌」と言います。

NH4+ + 3/2O2 → NO2 + H2O + 2H + 66cal

(↑化学式:アンモニア「NH3」から亜硝酸「NO2」を生成)
この反応で酸素が消費されるため濾過槽を使う時は曝気や酸素供給が必要です。

亜硝酸から硝酸への硝化

亜硝酸もアンモニアと同じく好機性環境で活動する細菌によって分解されて「硝酸(NO3)」を生成します。
硝酸を生成する亜硝酸酸化細菌はニトロバクター属やニトロスピラ属がメインです。

NO2 + 1/2O2 → NO3 + 17kcal

(↑化学式:亜硝酸「NO2」から硝酸「NO3」を生成)
ここでも酸素が消費されます。

硝酸の処理

硝酸の毒性はアンモニアや亜硝酸よりも低いですが、
循環式の養殖では硝酸は蓄積されて高濃度になります。

高濃度になった硝酸は魚介類の食欲低減や健康状態の悪化、
成長速度等に影響を与えます。

この硝酸を取り除くための方法を「脱窒」と言います。
この方法を使うと、硝酸は窒素にまで分解されて除去されます。

しかし、一般的に「脱窒」は嫌気性細菌(酸素のない環境)で行われるため、
好機性環境の養殖の循環サイクルの中に組み込むのが非常に難しいといった難点があります。

そのため、循環式養殖でも「脱窒装置」のない場合、
硝酸が蓄積した水は定期的に換水する必要があります。

また、脱窒以外でも硝酸が植物の栄養となることを利用し、
養殖と水耕栽培をくっつけた「アクアポニック」といったスタイルもあります。

2NO3 + 5H2 → N2 + 4H2O + 2OH

↑化学式:硝酸「NO3」を嫌気性細菌を利用して窒素「N2」に分解する反応)

まとめ

循環式養殖の生物ろ過では濾過槽内で「アンモニア→亜硝酸→硝酸」といった硝化反応が常に行われています。

硝化反応は飼育している生き物と同じように酸素を消費するため、濾過槽への酸素供給はとても重要です。
さらに、硝化能力を最大限に発揮させるためには水温(25℃~30℃)やアルカリ度(50以上)といった管理もする必要があります。

~参考書籍~
・養殖の餌と水 杉田 治男 著
・水産海洋ハンドブック
・循環式陸上養殖

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