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うなぎの養殖の現状とは?
日本人の大好きな魚と言えば「鰻(うなぎ)」です!!
栄養価が高く、夏バテをせずに暑い夏を乗り切るために、土用の丑の日にはウナギを食べる習慣があります。
(うなぎはホント美味しいですよね☆)
しかし、今みんなが大好きなウナギは危機的な状況になってきています。
なぜ、うなぎが危機的状態なのか?
近年、私達が食べているウナギの99%以上は養殖ウナギです。
天然のウナギはほとんど手に入れることはできません。
2016年に日本で消費されたウナギは約5万トンですが、そのうち国産のウナギは2万トン弱。
それに加え、中国や台湾で輸入された養殖ウナギが3万トン程度で合計約5万トンになっています。
(天然ウナギは70トンしかありません。。。)
そして、私たちが食べてきた養殖ウナギも今は生産するのが難しくなってきています。。。
そのため、ウナギの価格はどんどん高騰し、鰻は庶民が口にできない高級食材になってきています。
なぜ、養殖うなぎの生産が厳しくなっているのか?
うなぎ養殖での一番の問題点は「うなぎの稚魚(シラスウナギ)の入手が困難」なことです。
うなぎの養殖は天然のシラスウナギを捕獲するところからスタートします。
しかし、近年はうなぎの獲りすぎに加え、海や川の環境変化なども激しくなってウナギの稚魚であるシラスウナギが獲れなくなってきています。そのため、2018年にはシラスウナギが1kgあたり299万円の値をつける程価格が高騰しました。
このままではウナギの生産が厳しくなるだけでなく、本当にうなぎ自体が絶滅してしまうような状況になっているのです。
これからのウナギ養殖の「課題」と「解決策」とは?
うなぎ養殖の最大の課題は「種苗生産」です。
まずはうなぎの稚魚であるシラスウナギが重要です。
手に入らなければ養鰻事業は続けることができません。
そのため、今は盛んにウナギの「完全養殖」の研究が進められています。
うなぎの「完全養殖」は実現可能なのか?
「完全養殖」とは、飼育しているウナギの成魚が成熟して、産卵した卵から種苗を育てて成魚まで養殖することです。
「通常の養殖」は海や川から天然の稚魚を捕獲して育てています。
最近までウナギはどこで生まれて、どのように日本までやってくるのかさえわからない未知の魚でした。
(長年の研究によって親のウナギは太平洋のマリアナ海溝周辺で産卵して、海流にのって日本までくることが分かってきました。)
しかし、研究を重ねて2010年に日本は世界で初めてウナギの「完全養殖」に成功しています!
養殖技術としては、ウナギの完全養殖は実現可能になっています。
人工種苗のうなぎで「蒲焼き」を作ることに成功!?
さらに、今月(2019年6月)には水産庁と水産研究教育機構は試験養殖した人工のシラスウナギを使って、成魚まで育てたウナギで「蒲焼き」を作り試食会を行っています。
評価としては「天然のシラスウナギを養殖したものと変わらない」とのことです。
さらに、「養殖での成長速度や歩留まりも天然と違いがなかった」というのは驚きです。
このことより、人工種苗によるウナギの生産は商業化に向けて着実に動き始めています!
人工種苗によるウナギ生産の今後の課題とは?
シラスウナギから蒲焼き(製品サイズのうなぎ)まで育てるのは可能になりましたが、まだまだ種苗を生産するためのコストが実用化のレベルに到達していません。
シラスウナギになるまでの生存率は1%~4%しかなく、天然ものに比べて価格が高くなり過ぎてしまうのです。
そのため、まだコストの問題から「量産化」は厳しい状況です。
今後は種苗生産の効率化(歩留まりのアップや成長速度アップ)を進めることで、天然の種苗よりも人工種苗の稚魚が安価で提供することが求められています。
まとめ
現状の天然のシラスウナギを捕獲して、養殖を続けるのであれば今後もウナギの天然資源はどんどん減少していき、私達がウナギを食べれなくなる日は近いです。。。
しかし、ウナギの種苗生産が効率化して完全養殖の量産化が可能になれば、私たちがこれからもウナギを食べ続けられる未来が見えてきます。
日本の水産研究によって、ウナギの養殖がどのように変わっていくのか!?
これからも目が離せません!!
参考資料
・ウナギの科学
解明された謎と驚異のバイタリティー 小澤 貴和、林 征一 編
・トコトンやさしい 養殖の本
近畿大学水産研究所 編
・水産経済新聞
~オススメ書籍~
・トコトンやさしい 養殖の本
近畿大学水産研究所 編
内容:養殖の基本から最新の技術まで非常にわかりやすく書かれています。
近畿大学が監修していることもあり、特にマグロの養殖については詳しく解説されています。
養殖に興味を持った方が最初に読む本としては最適です!