【アクアポニックス】新規ビジネスとしての可能性とは?

「アクアポニックス」の新規ビジネスの可能性とは?

SDGsをはじめ、持続可能な循環型社会を目指す取り組みが日本でも始まってきています。

しかし、行政組織を含めて日本は縦割り社会であり、
自然環境全体を考えての取り組みはほとんどされていません。

これでは持続可能な循環型社会の転換は進んでいきません。

1次産業も農業、漁業、林業、畜産業といった各産業を個別に考えるのではなく、
もっと広い視点で考えて個々の産業を繋げる取り組みが必要になってきます。

その中で、「農業」と「養殖業」を繋げるシステムとして
注目されているのがアクアポニックスです。

今回はアクアポニックスの問題点や課題や今後の展開も含めて
わかりやすく解説していきます。

「アクアポニックス」とは?

システムの特徴について

「アクアポニックス(Aquaponics)とは
養殖を意味する「アクアカルチャー(Aquaculture)」と
水耕栽培を意味する「ハイドロポニックス(Hydroponics)」
を組み合わせてできた言葉です。

アクアポニックスのシステムは
「水産物の排泄物(糞や尿)を植物の栄養分として利用する仕組み」
になっています。

そのために、アクアポニックスの水槽は循環型のシステムが組み込まれています。

つまり、「循環式養殖」と「水耕栽培」の技術を繋げたのがアクアポニックスのシステムです。

アクアポニックス = 循環式養殖 + 水耕栽培

「循環式養殖」と「水耕栽培」についてはそれぞれ下記の記事で詳しくご紹介していますのでご覧ください。
「循環式養殖」の特徴とは?どのように水質管理をするのか?
「水耕栽培」とは?水耕栽培キットを自作するための基礎知識

アクアポニックスの目的について

アクアポニックの目的はいろいろありますが、
代表的なものは下記の3つです。

①「食料生産としての利用」
②「教育」
③「趣味」

①食料生産としての利用

将来の持続可能な食料生産方法としてアクアポニックスは期待されています。

食料を生産するためには多くの「水」や「肥料」を必要とします。

アクアポニックスの技術は水を循環して再利用するため、
使用する水が非常に少ないのが特徴です。

さらに、魚の糞を農作物生産の肥料として使用することができます。

このように水の消費を抑えて、有機物(糞)を無駄にせず循環させる技術は
今後の食料生産においては重要なファクターになってくるのは間違いありません。

②教育

アクアポニックスのシステムは教育のための良い教材として注目されています。

例えば、学校に簡易的なアクアポニック水槽を導入したとします。
すると生徒たちは魚や農産物を一生懸命に育てます。
そして、育った魚や農産物を実際に食べてみたり、袋詰めや加工をして
販売まで体験させることもできます。

これは、「生産→加工→販売」という実際の商売の流れを学ぶいい教材です。
さらに、授業では学べない命の大切さを学ぶ食育としても大きな効果があります。

③趣味

アクアポニックスは癒し効果があり、趣味としても最適です。

アクアリウムでは魚を鑑賞するだけになってしまいますが、
アクアポニックスでは魚を飼うついでにオーガニック野菜まで作って
実際に食べることもできます。

アクアポニックスの問題点と課題とは?

アクアポニックスの最大の問題点

アクアポニックスの最大の問題点は
「魚と植物が求める生育環境が違い過ぎる」ことです。

アクアポニックスでは水を循環させて使用するため、
魚の飼育水と植物の培養液が同じになります。

魚の飼育水 = 植物の培養液

しかし、魚と植物では必要とする条件が全然違います。

例えば、魚を育成するためのpHは7前後に対して、
植物を育てる培養液はpHは6以下が適正です。

さらに、魚にとっては飼育水がキレイな状態が理想ですが、
飼育水がきれいだと植物は有機物が不足して育ちません。

この他にも世界的に好まれる魚は海水魚であり、
海水には多くの塩分が含まれているため植物が育たない
といった問題も発生します。

アクアポニックスのベースとなっている技術である
「循環式養殖」や「植物工場」といった元のシステムも
コスト高く採算を合わせるのが非常に難しく苦戦しています。

そのため、この2つを組み合わせたアクアポニックスの実用化には
課題が多く実用化は難しいのが現状です。。。

最適なアクアポニック設計の形とは?

現状として食料生産を目的として最適なアクアポニックスの設計を考えるのであれば、
「水を循環させて使わない」方が良いです。

つまり、養殖で出てきた有機物を多量に含む排水を利用して、
その排水を植物に適した状態に調整して使用する方が現実的です。

餌→養殖(有機物発生)→水耕栽培or農業(有機物の利用)

「これだとアクアポニックスではないのではないか?」との疑問もでてきますが、
養殖と農業を繋げるのためにはより現実的なアクアポニックスであると思います。

自然を循環させるというのはそう簡単なことではなのです。
循環させるためには農業、養殖だけでなく林業、畜産業、エネルギー産業など
すべての産業が繋がらないと実現は難しいのです。

国内のアクアポニック取り組み企業は?

国内では下記の企業や教育機関が研究や教育でアクアポニックスに取り組んでいます。

・企業
飯島アクアポニックス、ラブアクアポニックス、おうち菜園、日本アクアポニックス

・研究機関
東京海洋大学、鳥取大学、北海道大学、日本大学、大阪府立大学

・教育に取り入れている学校
新潟県立海洋高校、宮城県立水産高等学校

まとめ(自宅でアクアポニックスの実践方法)

自宅でアクアポニックスを自作するにはどうすればいいのか?

食料生産としてはまだまだ課題の多いアクアポニックスですが
趣味としては十分に楽しむことができます。

アクアポニックスは自宅でも簡単に作ることがてきます。
私が自作した循環式アクアポニック水槽の作り方は下記の記事をご覧ください。
循環式水耕栽培システム作成(自作DIYチャレンジ)

これからの持続可能な生態系循環型社会とは?

アクアポニックスは生態系循環型のシステムとしては非常に期待できるシステムです。

しかし、アクアポニックスだけでは持続可能な社会は作れません。
各産業がバラバラに動いても実現できないのです。
だからと言って、日本が持続可能な循環型社会に急転換するのは今の政治じゃ不可能です。
(日本人が飢える程のよっぽどの経済危機くれば別ですが)

本当に持続可能な循環型社会を作っていくためには、
農業、養殖といった個別の産業のノウハウを高めることが重要です。
それと同時に、それぞれの産業を繋げた理想的な1つのコミュニティー
(地方の村のような単位)を作っていかなければなりません。

~おすすめ書籍~
アクアポニックスをより深く理解するためには、
「植物工場(水耕栽培)」「閉鎖循環式の養殖」の知識が必要となります。

下記はこの2つ理解を深めるのに最適の本です。

・「水耕栽培の知識」を増やしたい方
図解でよくわかる植物工場のきほん 古在 豊樹 監修
「水耕栽培の基礎知識」や「植物工場の設備技術・コスト」についてまで図でわかりやすく解説されています。水耕栽培や植物工場の入門書としては最適の一冊です。

・「閉鎖循環式養殖」の知識を増やしたい方
循環式陸上養殖 飼育ステージ別<国内外>の事例にみる最新技術と産業化
内容:循環式養殖のシステムの種類や水質管理の方法まで詳しく解説されています。他の専門書と比べると読みやすく初心者でも十分理解できる内容になってます。陸上養殖の入門書として最適の1冊です。(価格は少し高いですが、その分の価値はあります。)

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