循環式養殖(アクアリウム含む)の「水質管理」シリーズ⑥
循環式養殖についての記事はこちら(循環式養殖の水質管理)
目次
「pH」について
「pH」とはなにか?
「pH」とは水溶液が「酸性」か「アルカリ性」かを表す指標です。
pHは1(強酸性)~14(強アルカリ性)の間の数値で表します。
pHが7が中性で、測定値が7より小さいと「酸性」になり、7より大きいと「アルカリ性」になります。
水溶液の「酸性」と「アルカリ性」は水にどれだけの「水素イオン[H+]」が含まれているかによって決まります。
水の化学式はH2Oであり、非常に安定した分子の形で存在しています。
しかし、ごく一部の水分子は「水素イオン[H+]」と「水酸化物イオン[OH–]」に分かれた形で存在しています。
H2O ⇔ H+ + OH–
水中で「水素イオン[H+]」と「水酸化物イオン[OH–]」のどちらが多いかで「pH」は決定されます。
水素イオンの方が多い場合は酸性、水酸化物イオンの方が多い場合はアルカリ性になります。
また、温度が一定であれば、水中の水素イオン濃度[H+]と水酸化物イオン濃度[OH-]との関係は次のようになります。
[H+] × [OH-] = 10-14 (=Kw)
Kwは「水のイオン積」あるいは「水の解離定数」と呼ばれます。
そのため、pHを測定する際は[H+]のみを測定すれば、酸性とアルカリ性が決まるため基準は水素イオン濃度[H+]となります。
(↑図:酸性とアルカリ性のイメージ)
「養殖」や「アクアリウム」での「pH」管理について
循環式養殖やアクアリウムのような水を循環させて水生生物を飼育する場合、pHは低下する傾向があります。
これは水生生物が呼吸をすることによって「二酸化炭素(CO2)」を排出しているためです。
排出された二酸化炭素は水と反応し、水素イオン[H+]と炭酸イオン[CO32-]を作るため育成水は「酸性」になります。
CO2 + H2O ⇔ H+ + CO32-
(↑化学式:二酸化炭素が増えると酸性になる(H+が増える)
飼育開始時の飼育水のpHは「淡水」であればpHは7.5程度、「海水」であればpHは8でのスタートとなります。
pHが下がりすぎた場合は「重曹(重炭酸ナトリウム)」や「カキ殻」などを投入して、水質をアルカリ性に持つことが必要になります。
しかし、循環式の養殖ではアンモニア値が上昇します。
アンモニアは「pHが高くなると毒性の高い脂溶性のアンモニア(NH3)が増える」ため、
pHを上げすぎないよう注意しなければなりません。
アンモニアの毒性についての詳細はこちら(アンモニアの毒性について)
pHの測定方法
pHの測定方法は「簡易測定」と「プロ仕様」の2種類があります。
・簡易測定
アクアリウム等の小さな水槽でお金をかけずに測定をする場合は簡易測定キットがあります。
(ですが、ホントにざっくりした数値しか確認はできません。)
・プロ仕様の測定
養殖場等で水生生物を飼育している場合は「正確性」、「使いやすさ」、「壊れにくさ」を兼ね備えたpH計が必要です。
私の長年の経験から一番タフでオススメの相棒はやはり堀場製作所製のpH計です。
スイッチ一つで簡単に測定可能で、校正も標準液を使用して自分で簡単にできます。
メンテナンスは1年に1回の電極の交換で新品の状態にリセットできます。
おすすめのpH計:堀場製作所 D-210P-S
型式の最後のSはセットを意味しています。
こちらのセットを購入すればすぐにプロ仕様の測定が開始できます。
おまけ
「pH」の呼び方は「ピーエッチ」か、「ペーハー」か?
「pH」を日本語で言う場合「ピーエッチ」と呼ぶ人もいれば、「ペーハー」と呼ぶ人もいます。
pHは最初の発見者がデンマーク人であり、ヨーロッパでは広がったことから「ペーハー」という読み方が多くされてきたのですが、昭和32年(1957年)pHの日本工業規格(JIS)化のときに、読み方が「ピーエッチ」に統一されました。
つまり、正式には「ピーエッチが正解」となります。しかし、「ペーハー」と読んでも伝わるため問題はないです!