ドジョウの屋内での「無泥養殖」は可能なのか?

どじょうの「無泥養殖」とは?

「無泥養殖」とは屋内の水槽で泥を敷かないでドジョウを養殖する方法です。
ドジョウは通常、田んぼや野池で飼育されます。田んぼや野池は底部が泥になっており、ドジョウはその泥の中で生活しています。しかし、野外ではなく「屋内の無泥養殖」にすることで多くのメリットがでてきます!
通常の野外での飼い方は下記の記事にまとめています。
どじょうの「生態」と「養殖方法」について

通常のドジョウ養殖の「課題」と「問題点」とは?

野外(田んぼや野池)で行う通常の養殖でもドジョウを出荷可能ですが、通常の育成方法だと下記のような問題があります。

~「屋外でのドジョウ養殖」の問題点~

①泥が邪魔!!
ドジョウは土の中で育ちますが、実際に養殖するとなると泥がない方が効率よく育成管理ができます。
泥があると、ドジョウの生存尾数の把握が難しく、給餌量の設定や計画的な収穫がしにくいといった問題があります。さらに、出荷前には泥抜きの作業が入るため非常に効率が悪いのです。

②養殖できる期間が短い。。
ドジョウを野外で養殖できる期間は5月~8月くらいまでと限られています。
そのため、通常の屋外の飼育方法では年間通して1回しか養殖することができません。

 

この2つの問題を解決できる養殖方法が「屋内での無泥養殖方法」です。

無泥養殖の「養殖施設」と「飼育の注意点」はなにか?

「養殖施設」について

・養殖施設
養殖は屋内での管理となるため、ビニールハウスや建屋が必要となります。
ボイラー等の加温設備を導入すると周年生産が可能になります

飼育する際の水槽の水深は1m程で水槽の底部には泥を敷きません。
ビニールハウスの場合は夏場の温度上昇を避けるため、遮光カーテン等を取り付ける工夫は必要です。

給水設備
育成水は寄生虫のギロダクチルスの混入を防ぐため、地下水を使った方が良いです。
(※ギロダクチルスは天然の養殖場では普通にいるものであるが、無泥環境下では爆発的に増殖し大量斃死を引き起こすため注意が必要です。)

・酸素供給設備
高密度養殖をする場合は何かしらの酸素供給装置を取り入れる必要があります。
酸素供給方法についてはこちら(酸素供給方法について
ドジョウは空気を取り込んで腸呼吸もできますが、溶存酸素量の下限値はDO値3.5ppm以上で管理するのが望ましいです。

「育成管理方法」と「注意点」

・水温管理について
ドジョウが最もよく成長する温度は22℃前後です。無泥養殖をすると水温が20℃を下回るとカラムナリス病が発生し大量斃死の原因となります。30℃以上になると給餌効率が下がるため、水温の上限は28℃以下で管理するのが理想的です。

・育成密度
育成密度は出荷する製品のサイズによって変わります。目安としては製品サイズが6gであれば1600尾/m程度です。10gであれば1000尾/m程度を基準としての管理になります。
(ドジョウのメスは最大100g程まで成長しますが、オスは50g程度までしか成長しません。)

・「親魚の管理」と「種苗生産」
親魚は水温25℃以上で飼育していれば、周年採卵が可能です。(室内管理はこれができる!)一度採卵しても、しっかりと栄養化の高い餌を与えていれば1カ月後にはまた採卵ができます!オスは精巣を抜き出す際に死んでしまうため、メスより多くの個体を用意しておく必要があります。

・採卵の流れ(メスバージョン)
まず、採卵に適したメスを選別します。選別するメスは肛門付近が赤くなり、腹部が柔らかく膨らんでいるものをチョイスします。そして、ホルモン剤(ゴナドトロピン)を投与するために、水に麻酔薬を入れて眠らせておとなしくさせて、動かなくなったら腹腔内にホルモンを注射します。ホルモン剤を投与したメスは10時間後には採卵可能な個体がでてきます。採卵可能な個体は再度麻酔をかけて卵を絞りだします。
(いい品質の卵は透明感のあるクリアな卵で、白く濁った孵化しません。)

・精子の取り出し(オスバージョン)
オスは頭を切り落として、すぐに腹を開き精巣を取り出します。摘出した精巣はリンゲル液(※)に浸して切り刻みます。溶液が白濁したらこの液をメスから取った卵にかけて授精させます。

~※ドジョウ用リンゲル液の調整方法~
蒸留水:1L
塩化ナトリウム(NaCl):7.5g
塩化カリウム(KCl):0.2g
塩化カルシウム(CaCl2):0.4g
リンゲル液は上記の材料をブレンドして作成します。

・受精卵の管理
水温25℃に調整した水深40cm程度をエアレーションした水槽を用意します。
その水槽に受精卵を投入し、2日後には孵化し(ふか)して、2~3日で餌を食べ始めます。

・稚魚の餌となるワムシの培養方法
ドジョウは孵化してすぐは口のサイズが小さいため配合飼料を食べることができません。
そのため、人工的にワムシを培養して与えます。(野外では鶏糞でミジンコを発生させます。)
~ワムシの与え方~
ワムシは水田の土の中にいます。土を採取してその中のワムシを増殖させて使用します。
発生方法はワムシの餌となる濃縮クロレラを水が緑色になるまで加えて、ワムシが増えるのを待つだけです。
(ワムシがクロレラを食べると水の緑が薄くなるのでクロレラを追加投入!)
この水の中で受精卵を飼育すると、孵化したドジョウはワムシを食べて1.5cmくらいのサイズまで成長します。

・本育成方法
大きくなって、ワムシを食べる時期を卒業したら配合飼料を与えます。配合飼料は鮎用の配合飼料で大丈夫です。(ドジョウ用の飼料は市販品ではあまりありません。。)
屋内の無泥施設で約6ヵ月程飼育すると出荷サイズまでドジョウは成長します!

まとめ

ドジョウは屋外でも屋内でも養殖できます。
屋外養殖の問題点は最初に2つあげましたが、屋内養殖にも問題点はあります。
それは、養殖設備のイニシャルコストとランニングコストが高額であることです。

「自然を活用した養殖」は周年での養殖ができず、泥抜きも必要ですが費用は安くて済みます。
「屋内無泥養殖」は出荷時期や生産サイクルを自由にコントロールできますが、多くのコストが発生します。

ドジョウは栄養価が高く、日本の在来種であるため食材として今後必ず注目される食材だと考えています。(うなぎは稚魚が確保できずに資源が枯渇してきているため、土用の丑の日の主役が「どじょう」に変わる可能性もあります。)
そのため、ブームが来る前に「自然型」と「人工型」の養殖方法を融合させてドジョウ養殖に最適な新たな養殖施設の設計が必要です!!

参考資料:
ニッチな魚種の養殖技術

~オススメの本~
・ドジョウ養殖に興味のある方はまずはこの本からスタート!!

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