「小水力発電」とは?食料生産のための再生可能エネルギー

再生可能エネルギーシリーズ③
食料生産に適した「再生可能エネルギーの種類」についてはこちら!

今回は再生可能エネルギーである「水力発電」についてわかりやすく解説していきます。

「水力発電」とは?

「水力発電」は水の流れる力を利用した発電です。高所にある水は重力によって低いところに向かう性質があります。このエネルギーを利用して水車を回し、発電機を回転させて水力エネルギーを電気エネルギーとして取り出すのが水力発電です。水力発電では水の落差(高低差)が大きく、水量が多いほど大きな電力を得ることができます。
特に日本は水が豊富で山も多いです。山が多い日本の土地は海面との高低差が大きくなり、川の水流が強いため水力発電に適した場所が多く存在します。

※「水力エネルギー」のもとになっているのは「太陽エネルギー」
太陽エネルギーによって暖められて海面から蒸発した水は、上空で雨や雪となって陸地に降り注ぎます。陸地に降った雨や雪は高いところから低いところへ流れて海にもどるといった循環を繰り返しています。このように水力エネルギーは太陽エネルギーによって水が循環することで発生しています。
太陽エネルギ―についてはこちら(太陽エネルギーについて

 

「水力発電」にはどのようなものがあるのか?

水力発電と言ったらダムでの発電を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
富山県にある日本最大級の黒部ダムは高さが186mある巨大なダムで、発電の最大出力33万5000kWです。(1世帯あたり電力消費量を1kWと考えると33万5000世帯分の巨大な電気量です。)しかし、水力発電はダムのような大きなものばかりではありません。

↑写真:黒部ダム)

水力発電は規模によって呼び方が変わり、今は大規模な水力発電だけでなく「小規模な水力発電」が注目されています。

↓下記は水力発電の規模と呼び方についての表です。

水力発電の「呼び方」 出力規模(kW)
大水力発電 100,000kW以上
中水力発電 100,000kW~10,000kW
小水力発電 10,000kW~1,000kW
ミニ水力発電 1,000kW~100kW
マイクロ水力発電 100kW以下
小規模水力発電 20kW未満
ピコ水力発電 1kW以下

引用:これからやりたい人の小型水力発電入門

「小水力発電」とは?

「小水力発電」とは大規模なダムとは異なる小さな規模の水力発電です。小規模であるため、農業用水や温泉、下水処理場などの常に水が流れている場所に設置すれば安定して電力エネルギーを得ることができます。また、勾配のきつい山間部での価値(エネルギー源)の創出の起爆剤としても期待さています。

「小水力発電」の仕組みはどうなっているのか?

小水力発電所は大きく分けて土木設備、発電設備、送電設備の3つの設備から成り立っています。
①土木設備
水力発電するためには発電するための水を発電機まで導いてこなければなりません。そのために、取水用の堰(せき)や導水路、ゲート、取水設備が必要になります。

②発電設備
土木工事で引っ張ってきた水を電力に変える設備です。この発電設備は機械設備と電気設備の2種類があります。機械設備は水車や配管や油圧装置です。電気設備は発電機、配電盤、変圧器などの設備です。

③送電設備
発電設備で生産した電気を需要設備や電力会社の電線まで送るための設備です。この中には電線路や開閉危機が送電設備にあたります。

「小水力発電」のメリットはどんなことがあるのか?

・安定したエネルギーの供給が可能。
小水力発電は「太陽光」や「風力」に比べて、エネルギー(電力)の出力変動が少ないことが特徴であり、最大のメリットです。太陽光発電は昼夜の差、風力であれば天候によって生産できる電力は大きく変動します。電力が安定しないため、自家消費をする電力としてはとても使いやすい発電方法です。

・発電設備の計画・設計がしやすい。
水力は「水量」と「落差」が決まれば、実際に得られる電力エネルギーを事前に精度の高い「計画・設計」することができます。

水力エネルギー = 水量 × 落差(高さ)

小水力発電の「デメリット」は?

・規模のメリットがでない。
一般的には水力発電は規模のメリットが働きます。そのため、ダムのような大水力発電ほど経済性が良くなります。一方、小水力発電では規模のメリットがでないため、コスト削減をして、いい立地を選んでも水力発電事業のみで採算を合わせて運用するのはが非常に難しいです。(頼みの綱のFIT制度による買い取り価格も年々低下しています。)

・初期投資が大きい
他の再生可能エネルギーである風力や太陽光発電に比べても初期投資が高いのもデメリットです。太陽光も風力も土地と設備を用意すればどこでも設置することができます。しかし、小水力発電は設備の他に土木工事から始まり、発電機や水車を収める建屋も必要になります。このように小さい割に初期投資が膨大になるため、投資案件としてのマネーも入ってので普及が進まないのです。

・既存の権利や法規制のため手続きが煩雑
さらに、小水力発電をやるための水は公共性の高い資源です。そのため、水を利用しようとすると様々な利害関係が絡み合い、水利権や河川法の許可など複数の省庁にまたがる法的な規制を乗り越えなければならないといった課題もあります。

まとめ

「小水力発電」は安定した電力を供給できるため、「農業・養殖との相性がピッタリ」です。特に植物工場や陸上養殖といった最先端の食料生産技術はどこでも食料が作れるようになりますが、自然環境との差を埋めるため多くの安定したエネルギーが必要になります。例えば、植物工場では室内気温を一定に保つために常に電力を使用し、養殖ではポンプを回して水温を維持するために電力が必要です。これらの設備の電力供給源として小水力発電は適しています。

今後は各地方で有効に利用できる水力を利用し、植物工場と陸上養殖を組み合わせたサスティナブルな自立したコミュニティー(持続可能な循環型の町)を作る取り組みを実施していかなければならない時がきているのではないでしょうか?補助金や国の政策に頼ってばかりでは日本の食の安全は守れません!
小水力に課題が多いのはこの記事をまとめてても感じますが、このエネルギーの短所を補い、長所を最大限に利用することで有効な活用法は見えてくると考えています。

参考書籍
・よくわかる再生可能エネルギー
・風と水のエネルギー
・小水力発電が地域を救う 中島 大 著
・小水力発電がわかる本 全国小水力利用推進協議会 編
・これからやりたい人の小型水力発電入門 千矢 博道 著

~おすすめ書籍~
・小水力発電が地域を救う
山の価値を復活させる起爆剤としての小水力発電の導入から課題まで実例を含めて解説。山村の地域社会の活性化を考える方は小水力を選択肢の一つにしてみてはいかかでしょうか?

・これからやりたい人の小水力発電入門
水力発電を自作したい人にはとても参考になる一冊。

・小水力発電がわかる本
この本はQ&A方式で小水力の疑問に徹底的に答えた一冊。内容はかなり専門的な部分まで解説してます。

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