「バイオマス発電」とは?食料生産のための再生可能エネルギー

再生可能エネルギーシリーズ①
食料生産に適した「再生可能エネルギーの種類」についてはこちら!

今回は再生可能エネルギーである「バイオマスエネルギー(バイオマス発電)」についてわかりやすく解説していきます。

「バイオマスエネルギー」とは?

「バイオマスエネルギー」とは「生物(植物、動物)の中に蓄えられたエネルギー」です。
英語でバイオ(bio)は「生物」、マス(mass)は「量」を意味しています。バイオマスエネルギーの定義では「同じ生物由来でも資源に限りのある化石燃料は除きます」。

バイオマスエネルギー自体は新しいエネルギーではなく、遠い昔から使われてきたエネルギーです。薪(まき)を燃やして暖をとるのも、ある民族が家畜のフンを乾燥させて燃料とするのもバイオマスエネルギーの活用です。

「バイオマス資源の種類」はどのようなものがあるのか?

バイオマスエネルギーはバイオマス資源をバイオマス燃料に変換して使用します。バイオマス資源は下記のようなものがあります。これらの資源を木材ペレットやバイオアルコール、バイオディーゼル、水素ガス、メタンガス等のバイオ燃料に変換して活用していきます。この変換には熱を加えたり、微生物の発酵の力を利用して糖をアルコールに変えたりといった様々な方法があります。
バイオマス資源は多様で、未利用の資源も多いためポテンシャルが高いエネルギーです。

バイオマスの種類 内容 現状の利用状況 年間発生量
(万トン)
廃棄物バイオマス 家畜排せつ物 90%は堆肥などに利用 8,900
食品廃棄物 20%は肥料や飼料に利用 2,200
廃棄した紙 回収されずに焼却 1,600
製材工場の残材 90%は堆肥や燃料に利用 500
建設発生木材 60%は製紙原料などに利用 460
下水汚泥 濃縮汚泥にして一部利用 7,500
未利用バイオマス 林地残材 ほぼ未利用 370
農作物非食用部 30%は堆肥・飼料に利用 1,330
エネルギー作物 森林 ほぼ利用されていない

(↑表:バイオマス資源の種類とポテンシャル概要)

「バイオマス発電」とは?
どういった発電方法なのか?

「バイオマス発電」の仕組みはどうなってるのか?

「バイオマス発電」とはバイオマスエネルギー燃料を燃やして行う「火力発電」です。

つまり、バイオマス燃料を燃やして発電します。

なんで「火力発電」なのに再生可能エネルギーなのか?

化石燃料(石炭、石油、天然ガス)を燃やして発電する「火力発電」は再生可能エネルギーではありません。
石炭や石油といった化石燃料は長い年月をかけて作られた天然資源であり、限りのある資源です。そのため、化石燃料は持続可能性がなく、再生可能なエネルギーではないのです。

「バイオマス発電」=「火力発電」となると「バイオマスエネルギーも再生可能エネルギーではないのでは?」といった疑問ができてきます。

確かに「バイオマス発電」も同じ火力発電ではあるのですが、未利用の木材資源や、下水汚泥、一般廃棄物などをリサイクルして作られた燃料を燃焼して電気を発生させているため、再生可能エネルギーとされています。(バイオマス資源は自分たちで生産することもできます。)
また、カーボンニュートラルという考え方に基づき大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えないエネルギーとして考えられています。

「カーボンニュートラル」とは?
木材等のバイオマス資源を燃焼させると二酸化炭素(CO2)が発生します。しかし、木材は成長過程で大気中の二酸化炭素を光合成で固定して減らしています。そのため、二酸化炭素の排出と吸収はプラスマイナスゼロになります。また、食品廃棄物や家畜の排せつ物等の有機物も、その中に含まれている炭素はもともと大気中などに存在していたものと考えられプラスマイナスゼロとなります。バイオマス資源は結果的に大気中の二酸化炭素(CO2)の量を増やさないため「カーボンニュートラル」という考え方をしています。

「バイオマス発電」のメリットとデメリットは?

「バイオマス発電」のメリットとは?

バイオマス発電の最大のメリットは未利用の資源や廃棄物を有効活用できるクリーンなエネルギーであることです。今まではただ捨てられていた資源を無駄なく使えるため地球環境にやさしく、多くの「もったいない」を減らすことができます。
具体的には間伐材、動物の廃棄物、農業で発生するワラやヌカなども活用できます。特に山の中の放置された木を利用することで山の価値を取り戻すのにも役に立ちます。
山の価値についての記事はこちら(山の価値について

「バイオマス発電」のデメリットとは?

①環境破壊・食料問題
バイオマス資源として未利用資源を使う分には良いのですが、生産するとなると「環境破壊」「食料問題」がでてきます。
例えば、バイオ燃料用の作物(トウモロコシ等)を育てるために数千年も生きてきた原生林を切り開いてしまえば、大きな環境破壊になります。また、トウモロコシは食料・飼料・バイオマス燃料として様々な用途で使えるため、燃料としての役割を優先すると食料と競合してしまい食料問題を引き起こす原因になります。

②コストの問題
バイオマスエネルギーの利用は経済性(コスト)が大きな問題になります。間伐材や林地残材といった未利用資源を使うにしても伐採・運搬といった作業が発生し、人件費等のコストがかかります。さらに、それをチップ化や発酵などをする処理費用も乗っかってきます。
また、未利用資源の活用でなくバイオマス資源を生産するとなると栽培や植林のコストが発生します。これらのコストを考えると化石燃料の方に優位性が出てしまうといったデメリットがあります。

まとめ

「バイオマスエネルギー」は日本人のもったいない精神に適したエネルギーであり、これから伸ばしていかなければならないエネルギーです。しかし、食料との競合、コスト面の問題といった多くのハードルがあるのも事実です。
今はトウモロコシ等の穀物だけでなく、珪藻類(藻の仲間)を効率よく育ててバイオマスエネルギーに変える技術も出てきています。
今後は火力や原子力といった発電エネルギーばかりに頼るのではなく、再生可能エネルギーによる発電を日本はもっともっと増やす取り組みをしていかなければならない時が来ているのではないでしょうか?

~参考書籍~
・よくわかる再生可能エネルギー
・バイオマスは地球環境を救えるか 木谷 収 著
・これからのエネルギー 槌屋 治紀 著

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です