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農泊ビジネスは儲かるのか?
少子高齢化により、地域の農村部の平均年齢はどんどん上がっていっています。さらに、人口は都市に集中してしまい過疎化も進み地方の衰退が止まりません。。
そんな中、国としても強力に推進する取り組みとして「農泊ビジネス」があります。
農泊は「グリーン・ツーリズム」や「カントリーサイドステイ」とも呼ばれており、国内の観光客だけでなくインバウンド(訪日外国人観光客)の需要もあると期待されています!
しかし、農泊ビジネスを進めていく上で課題も多いのが現状です。
今回は現状の農泊ビジネスの「課題と問題点」や、農泊ビジネスの「今後の可能性」についてわかりやすくご紹介していきます。
「農泊」とは?
「農泊」とは何か?
農林水産省では「農山漁村において日本ならではの伝統的な生活体験や地元の人々との交流を楽しむことができる農山漁村滞在型旅行」と定義しています。
農村だけでなく、漁村や山村に宿泊しても農泊です。さらに「滞在型旅行」との記載もあるため宿泊場所は旅館なのか民家なのかもあいまいになっています。
「農泊」を簡単に言うと「体験や交流を伴った農村、山村、漁村での宿泊」のことです。
「農泊」と「民泊」の違いとは?
「民泊」の中には「都市民泊」と「農村民泊(農泊)」の2つがあります。
つまり、農泊は民泊の1つのカテゴリーです。
※注意:都市民泊でも農業体験を取り込めば農泊になってしまう曖昧さがあります。
農泊に関する法律はどんなものがあるのか?
農泊を開業するためには法律の壁があります。
農泊をやるためには条件によって法律に6つの分類があり、自分が開業するためにはどの法律を満たして開業するか考えなければなりません。各分類によって「最低宿泊期間」や「年間の営業日数の制限」、「構造上の許可要件」などが違ってきます。
※地域によっても条例などで規制が変わってくるので注意が必要です。また、解釈によっても変わってくるため農泊をやる際は地元の担当行政部署に事前に相談が必要です。
~農泊施設分類の6つのカテゴリー~
①旅館業によるホテル旅館業
②旅館業法による簡易宿所
③農山漁村余暇法による簡易宿所
(農家民宿と呼ばれるもの)
④住宅宿泊事業法による民泊
⑤国家戦略特区法による民泊
⑥いずれにも属さない滞在型
(オートキャンプやグランピング場)
国が進めようとしている「農泊」の方法とは?
国としては「農泊」を中心に古民家の活用や既存の畑や果樹園や景観といった地域資源を活かしていこうとしています。そして、国内の観光客だけでなくインバウンド需要も増えると考えています。
農林水産省のホームページでは下記のようなイメージが掲載されていました。
(↑資料:農林水産省HPより引用)
確かに、農泊の導入でこのように元気のない地域が復活してくれれば理想的です。
しかし、ホントにこのイメージのようにうまくいくのでしょうか?
農泊にもいろいろなタイプがありますが、国が推奨しているのはホームページの農泊PR動画でも出ていましたが古民家や農家に滞在するタイプの農泊です。地域の資源を有効活用したいのはわかりますが、特にこの古民家を利用したり、農家に滞在するタイプの農泊はかなりハードルが高いです。
実際には課題や問題点が多く発生し過ぎてなかなかうまくいかないと考えています。
「古民家や農家滞在タイプ」の農泊の問題点とは?
古民家タイプの農泊の魅力は「郷土料理や特産品といった食事」、「地域の人々とのコミュニケーション」「農家の体験」、「田舎の昔ながらの景観や古民家」でありこれらが集客するための最大の売りになります。
これらの具体的なサービスの例は下記の通りです。
・郷土料理や特産品を取り込んだ食事
農家さんがその日に採れた野菜や山菜、自家製の漬物や切干大根などと取り入れた料理。ジビエ料理や地酒も振る舞えれば理想的。
・地域の人々とのコミュニケーション
地域の人々とのコミュニケーションの場を提供する。
・農家の体験
農家さんと一緒に農作物の収穫をしたり、木材を使ってお箸を作る体験をしたりといった貴重な体験を提供する。
・「田舎の昔ながらの景観や古民家」
築年数が100年以上のような歴史ある古民家や昔ながらの棚田などの田園風景が広がっている。
農泊ではこれらの複数のサービスをクオリティ高く提供しなければなりません。若い人のいなくなった平均年齢が70歳近い田舎の農家の人達ができるでしょうか?
まず、無理です。。
これだけのフルスペックのサービスをするためにはそれだけのコストがかかります。サービスする人材の教育、古民家などの整備修繕費などのコスト、WEBやSNSなどの集客や販促の費用が必要です。さらにインバウンド需要を期待するのであれば、通訳を雇うか農家が英語を学習しなければなりません。。。
もし、これらをすべてできる農家さんがいても地域でサービスが安定しなければ継続的なお客さんは来てもらえません。これでは儲からずビジネスとしては成り立ちません。
「農泊ビジネス」はどうやっても儲からないのか?
古民家利用の農泊はビジネス的にはなかなか厳しいです。。
(古民家や農地を既に持っていて趣味的にやるのなら可能だとは思いますが。。)
そんな中、今は新しいスタイルの「農泊ビジネス」が盛り上がってきています!!
それが「グランピング」という方法の農泊です!
「グランピング」とは何か?
「グランピング」とはグラマラス(魅力的な)とキャンピングを組み合わせた造語です。
星野リゾートが2015年にグランピングリゾートをオープンしたことによってメディアに取り上げられて話題になりました。
グランピングは森や林、川などの自然豊かな空間、農地やキャンプ場も併設しています。宿泊もホテル並みの施設に泊まることができます。場所によっては温泉まで沸いている施設もあります。
それだけでなく、農泊に来たお客さんは下記のような体験ができます。
(どこのグランピングかによって体験できる内容は異なります。)
~グランピングで体験できること~
・農園での収穫体験ができる。
(ゴミゴミした都会から離れて、食物の生産から収穫まで体験できる。)
・農産物加工の工場見学ができる。
(展示のミュージアム付きの食品加工工場まで見れる!)
・取れたての野菜を利用したBBQができる。
(仲間と楽しく自然の中でバーベキュー!)
・温泉でゆっくりできる。
(温泉施設も入っていて、キャンプなのにお風呂の心配もなし!)
・リバーサイドのテントやコテージでの非日常空間での宿泊できる。
(設備はホテル並みのクオリティ!)
・夜はキャンプファイヤーを眺めながら、ワインも飲める☆
どうでしょうか?こんな体験が都心からすぐの郊外でできるって!?
自然の中で農業体験ができて、オシャレで、便利でメチャクチャ楽しそうじゃないですか?
家族で行ってもいいですし、カップルで行ってもピッタリです!
最初に解説した古民家タイプの農泊も良いですが、ビジネスとして考えた場合はグランピングの方が現実的に「農泊ビジネス」を盛り上げていきそうです!
「グランピング」の今後の可能性とは?
グランピングは今とても人気ですが、ブーム的な部分もあります。
しかし、まだまだグランピングがお客様に提供できる価値はたくさんあり、伸びていくビジネスだと考えています。
グランピングは現状の農園・温泉・ホテルだけでなく、新しいサービス(施設)をどんどん取り込んでいけるポテンシャルがあります。
例えば、今後の可能性としてはこんなサービスが考えられます。
・養殖のパッケージを組み込む!
循環式の養殖パッケージを施設内に入れると、水産物の収穫体験や獲れたての魚をバーベキューですぐに食べることができます。さらに、養殖排水を食物の育成に使えば循環型の生態系にも一歩繋がります!!
(これは得意分野です☆)
・宿泊施設の空きの利用と農作業をフリーランスに提供!
これからの時代は終身雇用もなくなり、パソコン1台で稼ぐフリーランスの人達が益々増えていきます。
しかし、人間が1日中部屋にこもって作業をしても生産性はあがりません。
そのため、グランピングの中にシェアオフィスを作り、さらに宿泊施設を利用可能にします。そして、1日の中で一定時間だけ農作業や水産物の管理といった仕事もしてもらうといったビジネスモデルも可能になると思います。自然の中で農作業でリフレッシュすれば生産性もあがり、経営者としては農作業の人員を確保でき、さらに宿泊施設の空きも減らせます!
まとめ
持続可能な形で生態系を繋げるビジネスをするためには、まず中核となる儲かるビジネスが必要となります。
ビジネスとしてお金を循環させて、生態系も循環させるビジネスモデルをつくるためにも農泊(グランピング)はピッタリであり、今後も注目してきます!
参考書籍
・農業ビジネス2019年春号
・田舎暮らし虎の巻 佐藤 彰啓 著
内容:今回の春号は農泊についての特集が組まれており、実際の事例も写真込みでわかりやすく紹介されています。また、最先端の農業についての記事が多く定期購読もオススメです!